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Paul Auster
柴田 元幸

新潮社

グループ:Book

ランキング:69554

価格:¥ 740

発売日:2006-12

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カスタマーレビュー

大人だから分かる、そんな物語  (2008-11-18)
とても面白かった。
 いや、面白いというより、胸にズシリと突き刺さった。読了後の今も、その感触が肺の辺りに重く残っている。
 オースターの小説はほぼすべて読んでいるが、「The Book of Illusion」(原文のもの。翻訳は決して悪くないが、絶望感が薄くなっている気がするので原文を推す)に次いで、二番目の傑作だと思う。

 2章までは、「ハックルベリー・フィンの冒険」の焼き回しを見ているような印象を軽く持ったが、全く見当違いだった。 この小説の本質は3章から先にある。 というのは、1〜2章で人生の絶頂を経験した主人公ウォルトが、3〜4章では堕ちに堕ち、社会の底辺とその少し上を行ったり来たりするからだ。 その落差……単に名声や金だけでなく、自分にとって大切なものを何もかもすべて失った空疎感。 それを棺桶のように引きずって生きるウォルトの姿が、あまりにも悲しい。

 もし、このレビューを読んでいる貴方(貴女)が、大なり小なり人生の凋落を経験していて、身も心も絶望にやつし、目の焦点が合わなくなって何もかもぼんやりと見えたことがあるのなら、きっとこの小説に共感できるはずだ。

 もし冷静に不満点を挙げるとすれば、4章の結末を少し急ぎすぎたことだろう。ウォルトの人生の集大成であるメッセージは抽象的で、あまりに短すぎ、そして読み手を必ずしも救ってはくれない。 なぜなら、ウォルトの話は、「まだ始めていない者」には福音となっても、「一度堕ちた者」にはそう聞こえないからだ。 その意味で、説得力が薄い。

 この小説は、18歳未満には決して理解できないだろう。 酸いも甘いも味わった大人の、やはり少し苦い話。 でも、不味い苦さではない。 格好付けて言うと、そんな小説だ。

現代の寓話  (2008-04-13)
素晴らしいと思います。作者の想像力には脱帽です。ただ、この作者は作家であると同時に詩人でもあるので、この物語の真の面白さ(巧みな音韻、文章のリズム)は日本語版では味わえないのかもしれません。ぜひ英語で読んでみたいと思いました。

そして終わった  (2008-02-18)
オースターの作品の中でも、とりわけ読みにくくて、とりわけ悲しい物語だったような気がします。

みんなほんのちょっとの幸せが欲しいだけだったのに。
登場人物たちは、大して欲張りでも、貪欲でもないのに、ちょっと幸せになりたいだけなのに、どうしてこうなっちゃったんだろうね。
そして気がついたら、この物語が出来上がっていたという感じです。

不思議な不思議な物語です。
読む人によって、いろいろな読み方が出てくるのではないでしょうか。

一所懸命生きてゆこう  (2007-08-01)
生きる事を諦めたり、生きる意味を消失したり、生きる意義を見つけた瞬間にその命をなくしたり。またあるいは、その無意味さに気付いてしまったり。
作者の描く主人公達がかつて味わったとは違う人生を、この主人公の少年は歩んだのだと思いたい。

しかもなんとなく、作者はああいう人だから、こういう言葉を望んでいるのじゃないかと勘ぐってみたりした。
『そんな少年が主人公?しかも訓練と、あるなにかの奇跡的なきっかけで?ジョーク?ひょっとして、たちの悪い比喩なんじゃないの?やりすぎよ、あなた』
なんて。

読み終えて気付いた事は、それがたとえジョークであろうがたちの悪い比喩であろうが、
この作品は、
「一所懸命生きる事」
を描いた物語だという事。
幾度死ぬような目にあっても、もはやどうしようもない局面に立っても。
主人公の少年が大人になり、それを成功と言えるものかどうかわからない所に立って、やはり死に直面しても。
生きて。
その人生に関わった人々との絆をけして忘れる事なく。

「死ぬまで生きた物語」

ラストを語る事はしません。

ただ思いました。
「一所懸命生きて行こっと」

と。

1番好き  (2007-05-07)
オースターの作品の中では1番好きです。

少年の生涯が、とても悲しいです。

でも彼は幸せになれたのかな。

オースターなりの幸せの定義が見えた気がします。

そしてそれは、ひどく心を揺さぶります。

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