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Anchor Books
グループ:Book
ランキング:2200
価格:¥ 1,697
発売日:1999-01-19
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レビュー(Amazon.co.jp)
主人公のジョーは、恋人のクラリッサと出かけたピクニックで、気球事故に遭遇する。その場にたまたま居た何人かの男たちが救助に駆けつけた。乗組員は無事だったが、救助にあたった男のひとりが、死んでしまう。その事件後のある夜、1本の電話がジョーのもとにかかってくる。「あなたはぼくを愛している」と。声の主ジェッド・パリーもまた、あの事件現場で救助にあたった男たちのひとりだった。彼はジョーと出会ったことを単なる偶然と片付けられずに、「神の意思」と解釈するが、それ以降、パリーのジョーへのストーキングが始まる。クラリッサは一笑に附し、警察も取り合わない。だがパリーの一方的な愛は、次第に脅迫へとエスカレートし、ついには現実の暴力となって、ジョーやクラリッサに襲いかかる。
パリーの愛は「ド・クレランボー症候群」と名づけられる。ある人物が自分を愛していると思い込む妄想症の一種である。しかし妄想に陥るのは、彼だけではない。ジョーはクラリッサがパリーのストーキングに無関心なために、ほかに男がいるのではないかと想像し、彼女を難詰する。事件現場で死んだ男の妻は、その男がピクニックに別の女を同伴していたと思い込んでいる。
退屈な日常では、ほんのささいなことで現実から足を踏み外すことができる。巻末に掲載されたド・クレランボー症候群の実症例を眺めて、この小説が遠いかなたの出来事ではないことに気づいたら、もうマキューアンの術中にはまっている。(文月 達)
カスタマーレビュー ![]()
さまざまな「愛の形」
(2006-02-02)
映画化時のタイトルは、「Jの悲劇」で昨年11月に公開されたイギリス映画でした。
原題は、「Enduring Love」で、「継続する愛」と「耐える愛」の二重の意味を持っています。映画では一部省略されていますが、小説の中には、いくつもの「愛の形」が登場します。登場人物たちは、「愛」故に悩み、苦悩します。
その究極として、「妄想的な愛」が登場し、主人公たちはそれに悩まされ、それまで良好だった二人の「愛」もおかしくなってゆきます。そうした精神的な苦悩を綴った物語です。
そのあたりが、映画ではもう一つ描ききれていませんでした。そのために、全体的な雰囲気は伝わってくるのですが、もう一つ明確な形を捉えられませんでした。それが、原作を読もうと思った理由なのですが、こうした心理小説的な作品を映画化することの難しさを改めて認識させられた作品でした。
現代人の「自我」の揺らぎ
(2005-04-05)
英語は実にわかりやすい。話も、純文学と娯楽作品の中間をゆく読みやすさが魅力だ。これは「ド・クレランボー症候群」といわれる精神障害の実際の臨床例に基づいた作品のようだが、結局、主人公Joeの「近代的自我」を主題にした作品だと思う。Joeは、サイエンスライターとしての自分のキャリアを、科学の本筋から外れた亜流だと「世の中が思っている」と思っており、それが、JoeがJedの「祈り」を拒絶した心理的要因である。つまり、Jedの提案を「馬鹿にするな」と拒絶するのである。Clarissaとも深層の部分で心がつながっておらず、それがJoeを疑心暗鬼にさせる。要するに、Joeは「世の中の主流から受け入れられていない」と考える点で、Jedとコインの表裏の関係にある。つまり、お互いが「引き合う」のである。自信がないから、気球の事故の一件は、自分に責任があるのではないかと、いつまでも気に病んでいる。抑制された筆致でなかなか読ませるし、全ての描写が有機的に関連しあっていて、素晴らしいと思う。掛け値なしの傑作というには躊躇するが、現代に生きる人間の「弱さ」を追求した見事な作品だと思う。
Enduring Love 愛の続き
(2004-10-24)
読み終わった後、しばらくこの物語が頭から離れませんでした。どんなに愛すれども永遠に報われる事のない愛のせつなさ、永遠に続くかと思われた恋の破局、永遠を誓った愛への残された疑惑。夫や恋人へふと心の距離を感じてしまったり、長年ず~っと心に留めた恋を諦め切れずにいたり・・・と、自分自身が、この物語の登場人物の誰にでもなりうるという事に凍りつくような恐怖を感じます。人間は愛は永遠では無い事を知っているからこそ、自分の愛する者に永遠に続く愛を求めてやまないのでしょうか?マキューアンの残酷なまでのクールな視点にその答えが綴られている様に思われました。愛を愛によって失う恐怖は気が狂わんばかりです。なのにそれが悲しく切なく、そして美しく感じてしまい、とうとうマキューアン・ワールドの虜になってしまいました。
サスペンスの殻をかぶった独自の小説世界
(2004-10-06)
巧みなプロット。シャープで美しい文体。見事なまでの心理描写。深い知識と教養。マキューアンが英国文学界の巨人と呼ばれる所以である。この作品はそれらの魅力を総動員したサスペンスで、主人公を追いかけて読者を一気に結末まで惹きつける。だが、もちろん作者は単なるストーカーのホラー・ストーリーして終わらせない。科学と神、文学と科学、アカデミズムの世界の内と外、加害者と被害者の相似点、生き残った主人公と死者とそのの家族など、合わせ鏡のようなモチーフを上手く組み合わせることで作品に見事な深みを与え、テーマが題名が示す通り「愛」であることを浮かび上がらせる。主人公とパートナーの愛、そして加害者の主人公へと神への愛である。
よく晴れた夏の日にイギリスのカントリーサイドをドライブすると、なだらかな丘陵の上を漂う気球に出くわすことは珍しくない。英国の美を凝縮するのどかな風景から、これほど完成度の高い独自の小説世界を構築する作者はやはり天才と呼ぶしかないのだろう。
身につまされる・・・だけではない深い話
(2003-10-05)
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