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資本主義のパラダイムシフトなどを大胆に語るブログ集成
(2008-03-14)
刺激的な書題の付いた池田信夫氏のこの著作は、04年8月から書きためた氏のブログの集成である。従って、コンテンツは様々であるのだけれど、今日におけるグローバル化・デジタル化した資本主義経済との関連を一言で表せば、「現代のいかなる産業もムーアの法則による創造的破壊をまぬがれることはできない」(P.98)ということであろうか。
確かに、日進月歩する情報通信産業の分野では、インテグラル型の「持続的技術」に対するモジュール型の「破壊的技術」の優位性が明らかとなりつつあるようだ。「技術が経済制度を決める」という前提を措くならば、垂直統合型(製造業型)アーキテクチャは水平分業型のそれに取って代わられる、というパラダイムシフトの像が否応なく浮かび上がってくる。
とはいうものの、私には、たとえば「Nスペ(NHKスペシャル−引用者)は70分バージョン(試写版)が一番おもしろい」(P.54)とか、外務省と同じようにNHKの内部にも存在するらしい「チャイナスクール」(P.58)の暗躍とか、そういった著者のNHK職員時代の内幕(暴露)話や、日本におけるメディアバイアスの問題などについても大いに興味を引いた。
無論、著者の専門である情報技術やメディアの未来などに関して、それなりに参考にはなるのだが、論調として独断的(強引?)な箇所もみられる。やはり、本書の後に刊行された『過剰と破壊の経済学』(アスキー新書,07年12月)を併読することで、指数関数的な技術進歩の代名詞といえる、先述した「ムーアの法則」の“破壊力”などが少しは理解出来よう。
最後に、本書との直接性はないのだが、大江健三郎「沖縄ノート」裁判を巡る文芸評論家・山崎行太郎氏とのネット上の“論争”は、最終的に決着がついたのであろうか…。一介のネットイナゴ(笑)としては気になるところだ。
メディアに踊らされない眼
(2008-03-02)
目から鱗な内容が盛りだくさんです。
普段メディアに接するとき、視野が狭くならないようにと気をつけていても業界の専門用語やWebの記事に踊らされてしまうのが常ですが著者は違います。非常に高い視野から物事を見ておられポイントを見事にズバッと述べられています。
わたしもIT業界の人間なのでWeb2.0などについてなんとなく分かった気になっており、「こうこうこういうもの」と勝手に解釈していたのですが本質を捉えた著者の記事にドキッとさせられました。
非常に面白い視野からの記事が多く、時間をかけてゆっくりじっくり読みたいと思える非常に希な良書だと感じました。IT関連の方には特にお薦めです。とても面白く読めました。
思い切ったことを書く
(2008-02-17)
思いきったことを書く人が減っていると思う。ブログも書籍も、ひとをほめる言説があふれており、批評性が見あたらない。
そういうなかで、池田氏のブログをまとめて書籍にしてくれたのはありがたい。
メディアによって作られた自分のモノの見方をもう一度組み立てなおすことが出来る書
(2007-11-10)
著者は上武大学大学院経営管理研究科教授。主にインターネットなどの情報産業の動向に詳しい論客として知られる人物。自身のブログに掲載してきた文章を加筆修正して一冊にまとめた書です。
大学教授という肩書きからは想像できない読みやすい文章を綴るのは、著者がかつてNHKの番組ディレクターを務めた人物だからでしょう。小難しそうな経済問題を老若男女に向けて分かりやすく切り取ってみせる手腕はなかなかのものです。一日で読み終えました。
著者がみつめる対象は、著作権の延長問題、最低賃金、メディアのバイアス、日の丸検索エンジン、インサイダー取引と実に多岐にわたります。そしてそれぞれについての著者の論を追うと見えてくるのは、現今のメディアによって報じられる経済事象の多くが、実態を必ずしも正確に写し取ってはいないという事実です。
例えばタクシーの規制緩和によって運転手の労働条件が悪化したという世間でよく耳にする批判に対して(89頁)、著者は資料をたぐって、規制緩和によって運転手3万人分以上の雇用が創出されたと割り出し、収入ゼロであったかもしれない3万人が300万円の年収を得られるようになったと論じます。規制緩和によって労働条件が悪化するという世評は、「今雇用されている人の待遇だけを問題にし、労働市場から排除されている本当の弱者が視野に入っていない」と指摘します。
言われてみれば確かにそうだ、と思わせる著者の論理展開にいちいち頷かされると同時に、どうしてメディアや政官界はそうした見方をしないのだろうと訝しく思うことしきりです。おそらくメディアや政官界に、事象をきちんと捉えるだけの眼力がなくなっていて、思い込み(といって悪ければ、結論)を先に立ててからその枠に事象のほうを都合よくはめ込んでいくという事態が起こっているといえるのかもしれません。
世の中を見方がちょっと変わる、大変勉強になる一冊です。
力作
(2007-10-09)
官僚/経済界などのプラットフォームの弊害に言及しつつ、国内の
「通信、IT、ネット事業、テレビ、新聞、ネットメディア」分野
が持つ課題を浮き彫りにする。
著者は高い視点から情報通信メディア産業界の旬な課題を詳細具体
的に斬る。業界に身を置く者としては痛快だ。
冒頭に列記した各情報通信メディア産業界は、これまでは全く
別の業界であり、お互い関心も無かった。
しかし、インターネットの影響度が増すにつれ、お互いの存在
を無視できなくなりつつあるらしい。そこが著者や佐々木俊尚
氏の存在価値が高まる所以。
情報通信メディア産業の革新は世界規模で進んでいるが、日本
では内需産業。本書中で取り上げている携帯電話事業に限らず、
日本の情報通信メディア産業界は国内しか見ない。
「内需」が前提ならば、企業にとっては「日本型"システム" by
カレル・ヴァン・ウォルフレン」に寄り添った戦略がベスト。
既得権益を有する既存プレイヤーが最も恐れるのは、イノ
ベーション(より具体的には"破壊的イノベーション" by クリ
ステンセン)だ。特に巨大な利権を国から付与されている新聞、
テレビ、(その上に乗っかった)広告会社、通信の雄はイノベ
ーションを全力で潰す。
IT事業者は閉ざされた国内企業の顧客獲得、規模拡大競争に
躍起だ。
ネット事業者が狙うのは、せいぜい国内企業からの広告費のお
こぼれに留まる。
著者はそんな業界を、バッサバッサと斬り続ける。
著者は情報通信メディア産業界"システム"の中核たるNHKを退
職し、現在は大学教授。"システム"の外側からさらに意見を述
べやすくなったのだろうが、その一方で主体者として"システム"
の改革ができなくなったことはどう整理しているのだろうか?
多くの現役労働者は本書を読んで「そうだよな」と溜飲を下げ
つつ、今日も「文学部唯野教授」の世界に生きる。
結論。関連業界人は、恥ずかしい思いをしないためにも、本書
の知識レベルは最低限必要。

