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古井 由吉

日本経済新聞社

グループ:Book

ランキング:389349

価格:¥ 1,890

発売日:2004-10

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カスタマーレビュー

昔から現在までの東京の情景描写  (2008-06-29)
・ 本書は、2003年に日経で連載されていた、1937年生まれの作家のエッセイをまとめたもの。原題は「東京の声と音」で、このままの方が良かったのに、と私個人は思う。内容は正に、昔から現在までの東京の情景描写と感想である。1年の連載だったため、季節感が織り込まれている。
・ 私は彼の小説を読んだことがあるが、常軌を外れた主語の省略、振り仮名の無い難解な語句が多数あるなど、無意味に読みにくかった。ところが、このエッセイ集は新聞掲載との制約あるいは自制により、適度に振り仮名があり、意味が理解しやすい。彼は制約がある方が良いものが書けるようだ。
・ 第二次大戦中及び敗戦後の東京の状況や風物、老人の心境・感傷・鋭い観察力、に興味がある人には特に面白いと思う。

閾の消失後の淡いの歩み、そして淡いの純化  (2007-10-10)
古井由吉の作品としては、『辻』、『野川』、『仮往生伝試文』を経て四作品目になります。『ひととせの』は随筆となりますので、小説としては未だ前述の三作品を紐解いたのみです。しかし、そのような私でも、この随筆が作家の小説作品の深みに流れているものが面に浮かんできたものであることを理解することはできます。
記憶が過去のもの、それも真実のものに限らないことは、古井の小説作品に於いて明らかに見て取れます。過去の記憶、現在の記憶、更には未来の記憶が交差し、その淡いに浮かび上がってくる人間の心象、それらが彼の小説作品に於いて際立っている点ではないでしょうか。そして、そこで顕著な役割を果たしているものが、五つの感覚のなかでも聴覚であることが彼の作品の大きな特徴でしょう。
「東京の声と音」という副題が示しているように、この随筆においては、聴覚に捕らえられて記憶の内に埋没していたものたちが、何がしかの契機で鮮やかに浮かび上がってきます。虚と実、聖と俗、過去と未来、それらの間に存在していた筈の閾は崩壊し、淡いとなったその空間をこの作家は歩み続けていきます。
写実、現実、超現実、そういった言葉から遠く逸脱したまま、古井由吉は前述の淡いを歩み続けていくのでしょう。それに対する謗りを浴びせることは安易なことでしょうが、それは全く不当且つ不毛な行為でしかなく、言葉としては成立しないかもしれませんが、彼は淡いの純化を作家にとっての手段且つ制約でもある言葉を以って紡いでいくことでしょう。

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