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東京創元社
グループ:Book
ランキング:75813
価格:¥ 735
発売日:2002-02-22
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カスタマーレビュー ![]()
もっと読まれるべき作家
(2007-04-26)
著者のネヴィル・シュートは60年代に大ヒットした反戦映画 "渚にて”の原作者でもあります。作風は極めて穏やかで彼の書いた本には闘争が描かれることはまずありません。どの本でも悪人は一人も登場せず、基本的には善意の人しか登場しないからです。
このパイドパイパーもそんな本で、第二次大戦初頭、世情の不安なフランス南東部から遥か英国を目指して10人ばかりの幼い子供たちを連れて脱出行を試みた老英国紳士のお話です。一行は途中様々な辛苦に出会いますが、老紳士の忍耐心・子供たちへの愛情と道中で出会った人々の善意に助けられて一つ一つ解決していきます。
愛情・善意・克己・思いやりといった、今の社会に欠乏しているものがこの本にはさりげなく満ち溢れています。ネヴィル・シュートが亡くなって既に半世紀もたっていますが、人の善意という、貰って最高に嬉しい贈り物を鮮やかに描く名人であり、もっともっと(特に若い人の間で)読まれるべき作家だと信じます。
混沌とした世界を照らす灯台
(2007-04-24)
静かな反戦小説だった。
そして、第二次世界大戦の最中に書かれた小説らしく、当時の各国の立場、各国民性が垣間見れる。
イギリス人の作家だけあって、もちろんイギリス大好きアメリカもねっ、と言うところなのだが、そこら辺の贔屓を差し引いても各国民の気質は的を得ている。
息子を戦争で亡くした老人がフランスからイギリスに帰る。
ドイツ軍が侵略して来る切羽詰った状態の中、断りきれず連れて行くことになった子供たちと共に。
ただ、それだけの小説だ。
それがまた読ませるんだが、説明するのは難しい。
戦争小説でもなく冒険小説でもない。
しいて言えばロードムービーならぬロードノベルだろうが、戦争の恐怖がじわりじわりと感じられ、人情の機微が胸に迫る。
小説そのものの幕切れが世界の終焉のようにも見える。そんな恐怖も感じさせる。
ただ決して暗くはない。
老人の信念や優しい心、死んだ息子の恋人ニコルの美しい心もちが、混沌とした世界を灯台の明かりのように照らしている。
そんな小説。
老パイド・パイパー、苦難の珍道中
(2006-09-30)
第2次世界大戦初期、ドイツの電撃作戦で戦況が急展開した1940年初夏。ジュネーブに近いフランスの山村で静養していた70歳の英国紳士は、帰国を決意するが、知人から幼い子供2人を託される。だが、ドイツの侵攻でてんやわんやの中、道程は困難を極める。しかも、面倒を見なければならない子供は、雪だるま式に増えていき…かくて、パイド・パイパー(ハメルンの笛吹き)よろしく、子供をゾロゾロ引き連れて、老紳士の苦難の珍道中が展開される。
この種の旅で遭遇すると思われる、さまざまな困難や障害(まだ幼いため危険を全く理解できず、聞き分けのない子供たちそのものも非常に大きな障害)を、老紳士が超人的な忍耐と寛容と粘り強さでもって、1つまた1つと乗り越えていく過程が、作者の実体験かと思われるほどリアルに、綿密周到に描かれ、非常に読み応えがある。また、極めて大変な旅にもかかわらず、”珍道中”と言いたくなるような、ほんのりとしたユーモアが漂っているのもとても良い。
だが、最後の最後に主人公たちを助けてくれる人物の動機については、もう少し曖昧でない書き方をしてほしかったと思う。一読ですんなりわかったなら、あるいは手放しで感動できたかもしれない。また、一行は子猫を拾うのだが、作者が途中で忘れてしまったらしく、どうなったのかがすっぽり抜け落ちている。私が動物好きなだけに、そして綿密周到さを持ち味とする話だけに、この脱落はものすごく気になる。心に残る良い話なのに、惜しいと思う。
忍耐強さという美徳
(2005-01-25)
もしも、少し穏やかな気持ちになりたかったり、ほっとするような慰めをほしかったり、勇気を忘れそうになったら、この本が役立つかもしれない。
いかにもイギリス人らしい主人公は、こんな風に年を取れたらよいかもしれないと、理想を投げかける「大人」の人物である。
彼の忍耐強さには感服する。本当にすごい。とってもすごい。
キャラクターは魅力的で、物語は結末まで飽きさせないだろう。
この本は第二次世界大戦の真っ最中に書かれた。だからだろうか。
私は空爆にあうロンドンの雰囲気や、牧歌的な農村風景と戦々恐々と逃避する人々との対比や、そんなところに臨場感を覚えた。
こんな世情だからこそ、作者のメッセージはいまだ色褪せない。
10代の方にも読んでほしい気がした。
えっちらおっちらの逃避行
(2004-12-12)
ドイツ軍がフランスに進行している最中、フランスへ休暇に訪れた老いたイギリス人の元弁護士が二人の子供(イギリス人)を託される。彼らはひたすらイギリスを目指そうとするが・・・・というお話。
シンプルな物語ですが、爆撃機に心を奪われる子供たちに困惑する老人という図は面白いです。逃避行に子供がいると、そこが弱い環になり、面白さを更に引き立てる効果を上げています、というか引率役からして老人なので、そのあたりの不安定さがこの逃避行を上質のエンターティメントに昇華させています。

