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筑摩書房
グループ:Book
ランキング:171123
価格:¥ 2,940
ポイント:29 pt
発売日:2008-03
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素直で常識的な意識論…それだけに難しい
(2008-10-20)
「中国語の部屋」の議論でおなじみのサール著作の最新邦訳書である。脳、特に心脳問題(こころとは一体何か? 脳の機能なのか? etc)について、サール独自の観点から、現在までに提出されているあらゆる議論を一刀両断にして突き進んでいく爽快な内容となっている。語弊はあるが、「槍玉に挙げられる」議論は、心脳問題が未だその問題点すらはっきりしない状態である以上、実に様々なものが存在している(実際本書を読むとその膨大な主張や仮説の量に驚くだろう)。それだけに、サール自身の主張する結論へ至るまで、大量の考察と議論が展開されるため、ややもすると読んでいて息切れがしてしまうかもしれない。ただ、本書の論点は実に明快であり、それは「意識というものは、確かに脳が関与する現象ではあるが、ニューロン発火などによる幻想や副産物ではなく確かに存在するもので、明確な存在意義を持つものである」ということである。もっとわかりやすく言うと、通常我々が「意識」というものに対して持っている概念それこそが概ねその正体を捉えているものであり、主観などを無視した現在の神経科学的研究では今後必ず行き詰る時が来る、と言う素直なものである。
「寝ている時は意識がなく、起きていると意識がある」などの議論は非常にわかりやすく素直である。しかし「常識」であるからこそ哲学的に考察を突き詰めて行くと非常に難しい。上にも述べたように、本書の主張は単純明快であるが、内容は極めて難しいと言ってよい。サール特有の読者に語りかけるような書き口は読みやすいが、読みやすさと理解のしやすさとはまた別のものである。じっくり何度も本文を行ったり来たりしながら、自分の頭で反芻しつつ読みたい一冊である。

