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佐瀬 稔

中央公論新社

グループ:Book

ランキング:236682

価格:¥ 880

発売日:1999-06

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残された山靴―佐瀬稔遺稿集

カスタマーレビュー

いまひとつ  (2008-07-29)
文章に佐瀬稔のキレが出ていなかった。
戦時中、行きたくてもなかなか行けなかった若者が山に情熱と命をかけた様子を強烈に鮮明に描き出した作品。
作品の視点が登山そのものにあるのではなくて、若者にあるため具体的な鬼気迫る山中での出来事を期待すると肩透かしを食らうが、今から50年以上も前の戦時中や戦後直後であっても、心が人間社会には向かわずに山や大自然に対峙することによって己を見出していた若者は存在していたのである。
登山装備一つとっても、現代のアルピニズムからは想像もできない貧弱な装備で、よくぞここまで登りきると思う。
戦前のクライマーはガッツがあり、気合がある。
現代のテクニカル重視の登山法からするとずいぶんと色を異にするが、物が無く戦争という厳しい状況に置かれても目的・夢を達成したいと願う若者の情熱を評価したい。

文章の調子はいつもの佐瀬稔のスパイスがかかっていて、個人的に『佐瀬稔調』が好きな自分には良かったと思うが、対象としているのが具体的な山をテーマにしたものではなく、また副題としてあるRCCについて直接述べられているわけではないので、何を主眼にして書かれているのかいまいち把握できず、論点がぼやけてしまっているため、読み辛いのが残念。

戦争と死  (2006-05-18)
 1982年に山と渓谷社から出た単行本の文庫化。
 戦中から昭和40年代までの日本のロッククライマーたちを取り上げ、その強烈な生き様を描き出した名著。
 松濤明、奥山章、芳野満彦、安川茂雄、吉尾弘など、この時期のクライマーには鬼気迫る雰囲気がある。死と隣り合わせで、困難な岸壁に挑戦しては次々と命を失っていく。どこか、みずから死を求めるようなところさえある。それはひとつには戦時中の凄惨な死の体験がある。人間は醜く死んでいくものなのだという思いである。そしてもうひとつには、鬱屈したコンプレックスがある。栄光ある大学山岳部とは一線を画された「町のクライマー」たちは、がむしゃらに登り続けることでしか、自己の存在を登山史に刻みつけることが出来なかったのである。
 本書は、そのあたりの緊張感を迫力ある筆致で再現している。スポーツとしての登山、清々しい登山とは、まったく別の世界を見せつけられる。
 佐瀬氏の登山ものでも一二を争う名作と思う。

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