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飯尾 潤

中央公論新社

グループ:Book

ランキング:95

価格:¥ 840

ポイント:8 pt

発売日:2007-07

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カスタマーレビュー

「日本は誰が動かしているのか?」硬派な一冊  (2008-08-19)
久々に硬派な新書に出会いました。かなり読み応えのある質の高い本でした。
議院内閣制における首相のほうがアメリカ大統領制よりも権力が集中している構造を指摘したり、官僚が(民間議員を含めた)審議会を活用して民意を汲み取って政策を立案している(それを政治家がしていない点に注目!)「官僚内閣制」と喝破したり。
日本の統治構造とはよく名づけたタイトルで、まさに日本を誰が動かしているのか、という点に考察を重ねていきます。
諸外国との比較も交えてあり、日本の統治構造の特徴、長所、短所も見えてきます。
個人的には、終章で著者が提言する政党のあり方に強く共感しました。日本でも政党活動が真の意味での国民の政治参加のベースとなれば、日本の政治も成熟するように思います。
硬派な一冊ですが、一読の価値あり、です。

日本の統治構造におけるジレンマに根底から疑義を叩きつける渾身の一冊  (2008-04-23)
 権力の分散を必然とする三権分立と権力の集中を必然とする議院内閣制の採用をとるわが国日本は、このジレンマを抱えているが故に機能不全に陥りやすい。
 野党の審議拒否による与党の強行採決などを見るにつけても自民党の一党独裁体制と揶揄されがちであるが、むしろそうではなく逆であり、権力の分散故に、所轄省庁による法案作成は他省庁や野党への配慮もあって妥協案へと収斂していき抜本的な改革が起きにくい。さらに内閣は省庁を監視、統制する権限が与えられていないが故に官僚の放縦がおきやすい。
 このような内閣による省庁統括権の欠如は、戦前からの遺物であり、こうした権力の分散による足並みの揃わない流動性の欠落が軍の暴走を誘発し、無謀な日米戦争の突入の一因を担ったという。こうした機能不全は、現代においても例えばバブル崩壊後の「失われた10年」に見られる財政政策の後手後手による対応の遅さにおいても散見されうる。
 さらにこの自民党一党優位性は、選挙が政権選挙ではなくそれ故に国民の意見が反映されにくく政党政治として機能していないという問題点も挙げられる。
 そこで本書は、内閣の求心力の強化から権限の範囲を拡張し、本格的な議院内閣制へとシフトすることの必要性を提示する。そのためには一党優位性から二大政党へと確立することで政党政治を機能させることで選挙が政権選挙となり、国民の意見が反映されにくい体質を改善することが必要である。一党優位性を起こしやすい中選挙から二大政党を起こしやすい小選挙への改変や「失われた10年」からの反省による橋本の政界再編改革といった国際潮流に迎合するような日本の統治機構の変遷に逆流せず、本格的な議院内閣制へシフトすることが難題ではあるが急務であると考えさせられる。

政治システムがよくわかる書  (2008-03-11)
日本の政治システムの実態をわかりやすく説明した本。
新書の中ではかなり良書の部類に属すると思われる。

まず、議院内閣制というものについてのありがちな誤解を解くことから始まる。
そして官僚や省庁の政治に影響を及ぼすメカニズム、内閣と与党との関係などが論じられていく。
他国の政治システムとの比較も交えながら、政権交代や野党の位置づけなども説明される。

学校では、建前的な政治システム(憲法に書いてあること)しか習わないが、本書では実際の政治がどう動いているのかがきちんと書かれている。
学校でも用いるべき本ではなかろうか。


さて、本書が出た直後、衆参で第一党が異なる「ねじれ国会」が発生した。
この点を考えながら本書を読んでみると、またなかなか興味深い。

本書でもしばしば触れられるが、日本の参議院は強い。
多少の衆議院の優越があるが、「日本の二院制は両院対等に近いのである」(p214)。
だからこそ、「ねじれ」た場合には政治的混乱が発生する。
制度上は、衆議院こそが政権選択の選挙となるので、当然そこの選択が尊重されるべきだが、参議院で脱線してしまうのだ。

筆者は、参議院を衆議院と異なる性格のものにしていくことを提起している。これは現実的な策だろう。
しかし、今のところは「民主政の原理を積極的に認めるならば、政権の成立基盤を侵さないよう、参議院は自己抑制を心がけるしかない」(p185)のだ。

参議院第一党は、言ってしまえば国政の半分の責任を負っているのだ。
ただただ「ノー」だけ言っていればよかった抵抗勢力とは状況が違う。
国民もまた、参議院第一党が強大な力を有していることを自覚した上で、その力にふさわしい義務と責任を求めていく必要があるだろう。
そうでなければ国政自体が頓挫してしまう。



最後に目次を記しておく。

官僚内閣制
官庁代表制
政府・与党二元体制
政権交代なき政党政治
統治機構の比較――議院内閣制と大統領制
議院内閣制の成立
政党政治の限界と意義

官僚内閣制とは?  (2008-03-08)
 本書は日本の政治構造がいわゆる「議員内閣制」ではなく、「官僚内閣制」であることを指摘した好著である。本来の議員内閣制の趣旨から言えば、国民の民意は、有権者(選挙)→議員(首相の選出)→首相(大臣の任命・組閣)→大臣(行政の執行)→官僚(大臣の補佐)という一本の線で国政に反映されるわけであるが、筆者によると日本の現状はそうではないことになる。
 そこには自民党政権の長期化、派閥力学による首相選出、党の意向や当選回数による大臣任命、そして官僚の代理人となる大臣、といった要素が議員内閣制本来の制度を歪めている現状が指摘されており、とても興味深い。また内容の割には読みやすく、初学者にも十分理解できる。

日本における政治改革の手引書―新しい切り口で日本の統治構造を概説  (2008-02-28)

 かつて、中曽根大勲位が「緋縅の鎧を着けた若武者」の頃、あるいは近年、田中秀征氏が「代謝機能働く国家統治を」(1999年8月9日付「日本経済新聞(経済教室)」)という論考の中で、「首相公選論」を提起したことがあった。本書でも指摘されているように、日本では「議院内閣制は権力を分散させる」とし、それ故「権力強化のためには、大統領制(首相公選制)を採用すべきだ」といった考え方(制度理解)が一部の政治家や言論人等にあったことは否めないだろう。

 「首相公選論」については、私はいわば“誤謬の合成”、つまり「一人ひとりの人が、判断力もあり、知的水準も高くとも、彼らの集合的な判断は、とてつもなく愚かな帰結をもたらす」(佐伯啓思『現代民主主義の病理』)という確信にも似た存意を持っている。それはともかく、先進的な民主政においては、実は「(民意が一元的に代表される)議院内閣制のほうが(民意が議会と二元的に代表される)大統領制よりも権力集中的な制度」(本書P.18〔括弧書きは引用者〕)だということを当書は証示する。

 このような議院内閣制の本来的な在り方をはじめ、本書では「官僚内閣制」「省庁代表制」「政府・与党二元体制」などのキーワードを用いて、私たちの抱いている様々な日本政治(統治構造)の通念を改め、政治制度に関する新たな視座を提示する。そして、たとえば著者は、真の意味での議院内閣制の確立は「政党政治の活性化があって、はじめて成し遂げられるものである」(本書P.209)とも述べているが、こうしたパースペクティブのもとに「平成の民権運動」を推進していくものと思われる。

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