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新潮社
グループ:Book
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価格:¥ 1,890
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発売日:2008-06-26
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コメント
(2008-08-20)
(『稲中卓球部』の著者でもある)古谷実のコミック作品の『ヒミズ』に、「バカがバカを殺す…それでいいじゃないか……」という決定的な(致死的な)言葉がある。「「遺伝と環境」による(より正確にはそれを不可侵な因果性=「運命」とする科学による)無際限の階層序列化のプロセスに組み込まれた個々人の生存においては、他者の呼びかけに対する応答可能性は空無化する。そのような個人の生存は、余すところなく完璧に対象化されてしまうという意味において、生活世界における居場所と足場を失う。ここで上述の引用を敷衍すれば、このように完璧に対象化され、生活世界における居場所と足場を失った者、それは「バカ」と呼ばれるほかないということ、そして今や我々一人ひとりが、この「バカ」に他ならないということ、さらに、このような状況における我々一人ひとりの生存は、お互いの存在を抹消し合うことで自滅に向かうほかないということ、それが『決壊』に描かれている、「世界」を失った<世界>である。作中の「崇」による「遺伝と環境」の決定論の単純さを批判することはたやすいかもしれない。だが、そうすることは同時に、奇妙にも能天気な行為となってしまうだろう---
先日読んだ桐野夏生の『メタボラ』と共に、人によっては致命的な落ち込みから立ち直れないであろう触発が期待できる。であるから、現代がまさにこの人を落ち込ませる触発あるいは衝撃を回避し予防的に排除する装置を(たとえそれが見せ掛けであっても)構築しているのは理解できる。
返して!
(2008-08-11)
想像はしていたけれど想像以上の暗黒世界を見てしまった。
筆者の筆はそれこそ悪魔のように冴え渡り、読み始めてしまった者を
捕まえて離さないだろう。
作中、被害者の家族が「生きて返して!」とテレビカメラに向かって叫び、
対して加害者は「返してって何?意味不明」というような反応をみせる。
読了後、そのエピソードがまず浮かんだ。
何故なら本書のために費やした時間とお金を返してとまず思ったからだ。
作者の技術にひれ伏した自分が恥ずかしくさえあった。
こんな読書体験は生まれて初めてだ。
難解であるが故、理解してみようと努力した。
しかし理解できなくていいと思う。
親しい人には絶対勧めない本であり、でも読んだ人と語ってみたい本だ。
罪、とは病気だろうか、人間社会の倫理観とは、そもそも人間の存在とは?
(2008-08-10)
著者の小説作品に私はずっと惹かれて読み続けて来ましたが、日蝕、の中世ヨーロッパ、葬送、の19世紀フランス、を何度か読み返した印象が強かった為か、現代日本を舞台にしたこの小説を読み始めた時、最初少し違和感を憶えました。登場人物達の細かな描写、何かが起こりそうな予感。・・・
沢野崇、の(そして同時に著者の?)強烈な絶望感やニヒリズムは一体何なのだろうか、と読みながら何度も考えました。上巻の前半で展開される崇の独言に私は想わず興奮し”俺がこの俺の生の失敗を十分に知っていて、しかもそれに自ら決着をつけた証として”(上巻88ページ)のような言葉に惹かれている自分自身に想わず危険を感じたりしました。この絶望感を引きずったまま最後の衝撃的な絶望で終わってしまい、私は読後しばらく本当に気分が重かった。大江健三郎著「個人的な体験」のラストを連想し、大江氏は最後に絶望の中にも僅かながら希望の光を与えてくれたのに、でもこの著作にはそれがない。それでも最後までこの世界の生に踏みとどまって書き上げた著者の身を削る努力を想いました。
事件のおぞましさ以上に、犯人の操る言葉のおぞましさが本当に恐ろしい。私たち人間が営む社会の常識や倫理観とは、一体何を基準にしていたんだっけ?と、一瞬途方に暮れ、身の危険を感じ、常識や倫理観が音を立てて壊れていくような恐怖を憶えるのでした。「人間とは単なるデータの束だ」(上巻266ページ)という言葉がありました。「罪」は病気に還元されてしまう、という発言もありました。”私と同じ脳神経回路を備えた人間が出現すれば、きっと私と同じ考え方をするだろう”という、かつて芥川賞選考委員を務められた故・日野啓三氏の言葉をも想い返し、唯物論か心神二元論か、という現代科学によってほぼ決着がつけられつつある、でも心情的には避けたいテーマに、私は突き当たってしまいました。
まさか読みきるとは
(2008-07-29)
「小難しいことを書く人」というのが、著者の印象だったから、まず上巻だけを買い、読んでみることにした。途中から彼の印象は変わっていき、今までの印象は私自身のまったくの思い違い、思い込みだとわかった。それをはっきり知ったのが上巻のラスト、もう次を読まざるにいられない。
そこに書いてあるのは誰?てそれってわたしじゃないの?かとさえ思って、声を上げそうになった。それは死に対する恐怖、死にたくないという気持ちが強ければ強いほど、現世に執着してしまう。子供が生まれてからここ20年ばかり、いつもそういう気持ちを突きつけられてきた。それはわたしが幸福過ぎるから??教えてよ!と読み進んでいったら・・・
あれがわたしとは思いたくはないけど、そんな結末なんだ・・・
人生は一回きりだよね、リセットなんてできない・・・
だから今、今ある生を見つめて、執着や苦しみを引き剥がす練習を毎日しているんだ。
この本を今の時期に読んで、本当によかった。
嵐吹き荒れる
(2008-07-24)
凄まじいストーリーに驚いた。バイオレンスに葛藤、グチャグチャの精神状態に誰もが巻き込まれ、どんどんすさんでいく心。
かなり重苦しいストーリーであるが、将来的にこのような事件が起こるとも限らない状況を考えると、リアリティに圧倒されて読みきってしまった。
ドラマ化はできるが、映画化となるとR指定だろうな。

