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浦沢 直樹

小学館

グループ:Book

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価格:¥ 530

発売日:1998-12

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カスタマーレビュー

我らもまたキンダーハイムの子供たち  (2004-11-25)
 いよいよ物語の舞台はドイツを離れてチェコへと移ります。
 怪物ヨハンを創り出した孤児院「511キンダーハイム」の生き残り証人とおぼしき老人ビーアマンを追ってフリー・ジャーナリストのグリマーがプラハへとやってきます。

 ビーアマンは「教育とは実験」(77頁)であると語ります。「511キンダーハイム」での思想教育を指した言葉なのですが、これは何も怪物を創り出した闇の孤児院にだけ当てはまるものではありません。
 どこの国でも教育は大なり小なり実験といえます。わずか一度しかない子供の人生においてどのような教育を与えれば社会にとって有益な人材を作り上げられるのか、その答を求めてここ日本の教育現場でも既に様々な実験が行なわれてきました。

 例えば、中学校からでは手遅れなので小学校から英語教育を始めてみよう。ゆとりの教育を目指して土曜日を休みにしてみよう。常用漢字の数をもっと減らして子供の負担を軽減してみよう。運動会のかけっこで順位をつけるのは差別につながるから「みんな一等賞」にしてみよう。等々。

 しかしそうした教育を施した子供たちがどんな大人になるのか、実験結果は遥か先でなければ出ません。そしてその結果が社会の要求を満たすものではないと判断されたとき、国家は新たに台数の計算公式を復活させてみたり、円周率を3へと単純化してみたりというさらなる実験を行なうのです。

 つまりコインの表側に「子供の幸福と安寧のための教育」という個人レベルの美しき目標が刻印されていたとしても、同時にその裏面には「社会秩序と公益をもたらす最適な構成員の養成」というもう一つの国家的思惑が常にあるということです。

 程度の差こそあれ私たちもまた、だからこそ「511キンダーハイム」の子供たちなのかもしれません。

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