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花村 萬月

講談社

グループ:Book

ランキング:166672

価格:¥ 660

発売日:2000-02

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カスタマーレビュー

愛やオリジナリティや自己表現を揶揄した素晴しいハードボイルド  (2008-06-15)
練りに練られた文章はエンタメと言うより、
純文学と言いたくなる人もいるかもしれないが、
読者を置き去りにしても自己表現を追求する
糞純文学とは違う素晴しいエンタメである。
ハードボイルドの主人公は、
酒飲んで女抱いて暴力を振るわないといけないので、
何も出来ないヘタレよりは、
悪い事をやりまくる悪漢に近くなるが、
本書は正義と悪、我慢と自己表現の匙加減が素晴しい。
アウトロー社会に関係することになるが、
主人公は妻以外に女を知らなかった
真面目な元サラリーマン(CAD技師)なので、
アクションが滑りまくって、
かっこ悪いのにかっこいい!というのがたまりませんわ!
暴力沙汰に巻き込まれても、もちろん敵に叩きのめされるw
歯を折られ40代で入れ歯人生ww。
そんな主人公であるが、やくざに敬服されるようになる。
何度地に這い蹲ろうとめげずに立ち上がってくる根性に敬服などという単純な話ではない。
逃げた妻を捜す話だが、
よりを戻す為でもないし、復讐する為でもない。
人にとって一番大事なのは生きる姿勢だと勉強になる感動作品。
セクースシーンが多過ぎるのは欠点だが、
悩む若者を救うバイブルとして有効だと思う。
自己表現出来ないひきこもりのうざいオタクにも、
表現が激しすぎて人を殺してしまった不良にも、
本書は救いになると思う。
本で救われる事に気づかずに、
自分一人で内省して悩んだり、
外へ向かって暴れたりする、
未熟な若者はほんと可哀想。
過去の事はいいんだよ。
誰も助けてくれなくてもいいんだよ。
救いは本の中にあるのです。
漢字そのものの中にもあるのです。

一度は読むべき傑作です。私は何度も読み返しました。  (2007-12-08)
天衣無縫且つ変幻自在の文章力。縦横無尽の構成力。
四十不惑と言うけれど、煩悩だらけの主人公、諏訪徳雄の波乱万丈の人生再出発の軌跡を描く。
一見ありふれたテーマだな、と思うので、見逃してしまう人もいるでしょう。私もその一人で、ずっと素通りしていました。それは、「皆月」という、なんだかよく分からないタイトルも一因でした。しかし「皆月」って地名だったんですね。一読して事情がよく分かりました。それにしても、著者の文章には、読者を物語に引き付けて放さない魅力があります。
話し言葉で、テンポよく交わされる、巧みな会話。書き言葉で、正しい文法と、適切な引用を用いた、主人公の独白。
幅広いジャンルと年代に跨る本を、よく読み込んでいるのが窺えますし、地理にも詳しい。しかもそれを、しっかり自分のものにして、文章に表現しているのですから脱帽です。温故知新です。
芥川龍之介は、古の物語に新たな意味、そして意義を与えました。
花村萬月は、日本のみならず欧米文学をも飲み込んで咀嚼し、新たな形で提示しました。多くの作家とその作品が、花村萬月を触媒にして、新たな命を得て蘇ったのです。
花村作品を楽しむ、と同時に、これを機会に過去の名作にも目を通しては如何でしょう。とりあえず、夏目漱石著「吾輩は猫である」あたりからどうでしょう。

せつなさと再生  (2007-11-08)
まじめ一徹でひたすら誠実に誠実に生きてきた男。
若い妻を迎えて、幸せをかみ締めながら平凡に目立たず生きていた。そんなある日妻は全財産をもって突然家出。
「みんな、月でした」と一言残して・・・
すべてを失った男の下に現れたのが妻の弟。
弟にあてがわれた風俗譲と三人の物語が始まる。
非常に切ない、一生懸命生きてきてやっと築き上げたささやかな幸せが瓦解した男。ヤクザとしか生きていけない傷つきやすい義弟、風俗上として辛酸をなめつくした純粋で一途な女。
そんな三人が心の傷をなめあうかのように生きていく、しかし、彼らはとてつもなく逞しい。
人間の逞しさと絆の深さ、そしてせつなさの中に暖かさをかんじるような物語。
最近の小説は個性に走り、設定がめちゃめちゃだったり、構成や人物描写が破綻してしまうものが多いが、純粋な文学作品として非常に質も高く、物語のよく出来ている。
そして「みんな、月でした」の謎が解されるとき、うならされる。文章が上手いから読みやすい、人物描写が妙だから引き込まれる。
おそらく花村萬月の中で最も優れた作品だと思う。

一気に読み終えた  (2007-08-13)
花村氏の作品は何作か読んでいるが内容の良い部類の作品である。
このため、読み始めから一気に完読。

内容は、ある日パソコンオタクの中年男のもとから美しい妻が失踪し、ヤクザの義弟と新しい妻(元ソープ嬢)と共に元妻を捜しに旅に出る話。
それほどのドキドキ感はないものの、情けない中年男の行動とヤクザな義弟の行動がとても面白い。

そもそも花村氏は若い頃、日本中を旅していた(放浪していた)経験があるためか、旅の途中の描写は見事。また、薬物に染まった経験もあり、そのあたりの話も妙にリアル感があった。
氏の作品を読んだことのない方にお薦めできる。

花村萬月の世界  (2006-11-17)
この本で花村萬月が好きになりました。
チリチリ、読んだ後に切なくなり、その後にやって来る嫉妬のようなもの。
自分が決して体感出来ないようで、直ぐ傍に似たようなことが転がっている感覚。
頭だけでなく、感情が忙しくなる。
成るほど、あのときの感覚を文字にするとこんな風になるのか、と思いました。
客観的に見ると駄目な男に見える、弟も、主人公の冴えない中年も、ソープ嬢も何故か愛おしく思えて来る。
人をどんな枠組みで捉えるかによって、魅力的になったり、ただついていけない世界の人に変化したりする。理性とか、常識とか、倫理観とかを取り去って考えた時、人の痛々しさと目を瞑りたかった感情が垣間見える。
私は癖になる世界観で、その他の作品もその後沢山読みました。

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