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講談社
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天を衝く〈1〉―秀吉に喧嘩を売った男九戸政実 (講談社文庫)
カスタマーレビュー ![]()
奥州藤原氏滅亡へ
(2008-03-30)
清衡は楽土を作り上げた。
その楽土を受け継いだ者たちが源頼朝により滅亡するまでの物語。
自分たちの立場を絶対的にするために招いた源義経。
その欲が奥州藤原氏滅亡に帰結する。
真の楽土
(2007-02-07)
「曽祖父の望んだ国だ。民のすべてが一つとなってともに助け合う。それが楽土」
この泰衡の言葉に象徴されるように、ついに蝦夷は楽土を実現した。だが、そこに源平合戦にからみ、源氏の手が・・・。
今、「美しい国づくり」などという言葉がもてはやされているが、真の美しい国とは、この奥州藤原氏が築き上げた平泉をはじめとする奥州のことではないだろうか。誰もが笑って過ごせる国、誰もが助け合って安心して過ごせる国・・・。
経清、清衡らの思いを受けて実現したこの国を守るため、泰衡は一人苦悩しつつも、最後の決断を下す。それは例え己の身を引き換えにしたとしても、蝦夷の心を残すために・・・。
この本は、あくまで歴史小説にすぎないですが、現在の日本の情勢に照らし合わせても、その思想・考え方は極めて方向性も内容もマッチしており、まさに見本とすべき姿の一つを現してくれます。願わくば、この本を多くの方に読んでいただいて、一人ひとりの考えに変化をもたらしてくれればと思います。
情念の勝利
(2006-06-05)
「火怨」「天を衝く」とともに陸奥三部作と言われる本作ですが、いずれもプロット、登場人物の性格の拵え、台詞回しなど、いずれもよく似たパターンです。
下手な作家がこれをやれば、マンネリ、二番煎じ、才能の枯渇などと酷評されるところですが、殆ど、そのような評が無く、三作いずれも概ね好感を持って迎えられているのは、やはり作者高橋克彦さんの力量でしょう。
単に小説の素材として、面白い物語に出来そうだから、アテルイ、奥州藤原氏、九戸政実を選んだというのではなく、とかく中央からは歴史上軽視されてきた東北人として、正史への異議申し立て、「これだけは何が何でも言わせて貰わねば気がすまない。歴史上の勝者の歴史だけが正史ではない」という執念、情念のなせる技なのでしょう。それが三部作いずれもの作品中から滲み出ているからこそ、同じような作りの物語であっても、熱いものを感じさせてくれるのです。人を感動させるもの、動かすものは技巧や論理だけではないのです。
まさに光彩楽土
(2001-07-01)
藤原経清から四代かけて作り上げた奥州楽土の最期を描いた、シリーズ完結巻でラストにふさわしい盛り上がりをみることができた。しかし、この炎立つは前三巻が傑出していて、その三巻で完結しているような感を受けたのでその意味でマイナス1。
全五巻を読み終えて
(2001-04-01)
蝦夷(えみし)の誇りとは何であろうか。この物語の主題は、中央対辺境。その中で、辺境の側から中央を見る、という視点でこの物語は作られている。摂関政治は現代にもつながる管理社会である。そこから抜け出そうとすれば、新たな時代、武家社会しかない。しかし、武家の社会は一歩間違えれば、いやたいていはどの国も、まずは軍事独裁国家になる可能性が大きい。高橋克彦氏はそういう時代の流れの中で、そうはならない可能性もあったのではないか、とこの物語をつむいだのであろう。武家社会でありながら、合議制を本旨とし、平和を求め、国の産業を盛りたてることを目的とする国造り。それは東北という小さな国の中であり、しかも金山という産業があってこそ可能な国つくりではあったが、ここに蝦夷の誇りがあった。源平の戦を主題にした小説は幾多もあったが、いずれも、台頭する源氏を肯定する物語であった。しかし、そういう物語からは、人間の情愛、権力闘争はつくりやすいが、新しい時代を理想化しないと話が終わらない。時代から離れた者たちから、物語を作るということ、たとえば僧侶の立場から作る、ということも出来るだろう。ただ、それだと「国」の本質は見えてこない。当時、日本であって日本ではなかった地域から物語を作ることによって、初めてその時代の全体像も見渡せるし、「誇りある国」を小説は描くことが出来るだろう。我々はもっと、こういう物語を自らの物にしなくてはならない。たとえば、アイヌの物語。たとえば、琉球の物語。誰かきちんと描いてくれないだろうか。
ところで、この物語を読み終わった後、藤原氏みたいな闘いを現代でもしているところを思いだした。圧倒的な中央の力に屈せず、しかも媚びることなく、闘いの先を読みながら、長い長い闘いを自らの生活の一部にしながら、「命こそ宝」という経清にも通じる思想を全員のものにし、そして何度か勝利を収めた「国」が現在の日本にある。沖縄である。沖縄が日本に正式に入っていた期間はまだ100年にも満たない。沖縄から日本を見れば、日本の本当の姿が見えるのかもしれない。

