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中内 光昭

岩波書店

グループ:Book

ランキング:445188

価格:¥ 819

発売日:1999-02

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カスタマーレビュー

クローンとは、生物の増え方とは。新書のレベルの詳しさ、わかりやすさのジュニア選書です  (2005-10-24)
 クローン羊のドリー誕生が1996年、この本はその3年後に書かれた訳ですから、かなり話題に乗っかった本か、と思えばもっと基本から書かれています。もちろんタイトルが「クローンの世界」ですから、クローンの定義、つくり方、問題点が書かれているのですけれども、各章も「細胞の増え方」「自然界のクローン」・・・「クローンを越えてー性の意味」と、クローンに関わる生命の基本的な現象から説明しています。
 きちんと丁寧に書かれていて、内容は「ジュニア選書」ではなく、普通の新書であってもおかしくないぐらいと思いました。言い換えれば、そのぐらい成長した「ジュニア」でないと読みこなせない、高学年用の「ジュニア選書」です。近くの市立図書館では児童図書コーナーにありました。中高生は、まして大人は覘かないですかねえ・・・。大人にだっって「面白いだけ」の最近の新書よりはよっぽど知識を満足させてくれると思うのですが。

 著者はホヤの研究をする生物学者。だからでしょう、無脊椎動物や植物なども大きく視野に入れた、基礎生物学の目線で説明してくれ、いきなり「クローンはいいのか、悪いのか」みたいな論議に行かずに冷静です。ホヤについて詳しすぎるほどの説明は、ご専門ですからしかたないでしょうね。少し知っている人は面白くても、そうでない人には横道に入ってしまったようで本筋が見えにくくなるような気もします。著者のおっしゃるとおり「わかるところだけまずよんで」進めばよいでしょう。ホヤの群体で個体同士の血管がつながっていて一緒に流れているものがあるのは、何処までが「個体」か、という問題にも思えて興味深かったですし、自己、非自己の認識の問題にも関係する現象も多種の生物の現象を知ることで人間の免疫についてもよりよく理解できる可能性を感じましたけれど。

 最後の章「"クローン人間”を考える」では、「技術を野放しにすることは人類の自滅につながっています。当然のことながら、人間社会はみずからつくりあげた技術の使い方について発言する権利と義務があります。一方、科学者には研究の自由があり、それが保証されてこそ、科学の"予測できない”発展が可能になります。」と、科学者の立場からの発言が書かれています。「立ち止まるとき―明日の地球のために」というのが、最後のタイトル。よく議論しなくては、ということは誰もが否定はしないことですが、実際の社会、科学の世界では、常にいっそう早く、速くと走っているばかりのように思えてなりません。多分、誰かが一人だけ立ち止まることでは駄目なことで、みんなが一斉に少しだけ歩調を緩めないと駄目なのかも。そのためには科学以外の力、智恵が要求されてくると思います。

 ジュニア選書、ということで大人の目に触れないところに分類されてはもったいない、しっかりした内容の本です。

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