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岩波書店
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難しい話をわかりやすくという困難な課題に挑戦
(2008-06-16)
砂糖を通じて近代史の一側面を語る好著である。
「あとがき」にもあるとおり世界システム論と歴史人類学の手法をもって記されているが、難しい専門用語はほとんど出てこない。平易な言葉で、文字通り高校生にもわかるように記されている。大航海時代、植民地、プランテーション、奴隷制度、三角貿易、産業革命といった高校世界史の教科書や参考書には必ず出てくる重要用語を使い、高校世界史と学問としての世界史の接点を作ろうとする試みに好感が持てた。
本来、「砂糖あるところに奴隷あり」というように生産に集約的な労働を必要とする砂糖はプランテーションや奴隷制度といった近代ヨーロッパの植民地支配の手法と非常に相性がよかったということも新たな発見であったが、イギリスやフランスの植民地支配の主要な手段となっていたことはある種の驚きでもあった。本書に紹介されているような砂糖プランターの膨大な富というものは初めて知ったことである。
また、砂糖が紅茶やコーヒー、チョコレートといった他の世界商品と結びついてヨーロッパ世界に定着していく過程も興味深かった。新世界からの新しい、そして高価な商品の組み合わせは当時の世界では光り輝くような魅力を持ったものと想像できる。大量に輸入した紅茶と組み合わせることによって大量に砂糖を消費するようになったイギリスと植民地で大量に砂糖を生産するも自国であまり消費せずに輸出するフランスといった各国ごとの砂糖の受容が異なることも面白い。
まさに砂糖は近代世界システムの寵児であったといえるだろう。そして近代の終焉とともにその地位を下げたことも印象的である。
ウォーラーステイン的視覚の砂糖的応用
(2007-11-26)
著者は,1940年(大阪府)生まれ。京大文学部卒,同大大学院文学研究科を修了し,阪大助手,同大(87-04年,教授)。定年退職後は,名古屋外国語大学を経て,京都産業大学へと天下り。文化庁文化審議会委員。同文化功労者選考分科会委員。彼の名を知らしめたのは,なんと言っても,『工業化の歴史的前提――帝国とジェントルマン』。これは早々に英訳されて“輸出”さるべき著作だ(なんなら私が請け負いましょうか?)。生産様式ではなく,消費や道徳規範・習慣などから資本主義を説く。『民衆の大英帝国』(90年)や角山栄との共著『路地裏の大英帝国』(82年)からわかるとおり,著者は反東大大塚史学=越智学派=京大反マルキスト歴史学派の領袖。本書は著者56歳の作品。余計な御世話だが,I・ウォーラーステイン『史的システムとしての資本主義』(85年)の翻訳でそうとう印税収入があったに違いない。本訳書が古本屋になかったためしはない。
砂糖という現代ではありふれた日常品に数世紀の世界史を読み込む(説き起こす)というお洒落な視角。羨ましいくらいカッコいい。もっと言うと,「砂糖のあるところに、奴隷あり」(第6章)という題名からわかるとおり,資本主義が歴史段階説的に一国史的に発展するのではなく,世界自体が一国の資本主義を後ろで支えていた,いやこの世界自体がシステムとしてイギリスに資本主義を産み落としたのだというウォーラーステイン的視覚の砂糖的応用(敢えて,シドニー・W・ミンツ『甘さと権力――砂糖が語る近代史』的翻案とは言うまい)。これを砂糖に凝縮しているのだ。じつにお洒落。
じつは,彼の指導教官=角山栄には『茶の世界史』と題する,けっこう売れた著作がある。とうぜん,「砂糖と茶」は「遭遇」する(第3章)。川北は恩師の作品を補完する形で,イギリス庶民の食卓史を描き出したことになる(といっても,モーツアルト=史上初の庶民音楽家という規定が難しいように,貧乏人には砂糖は高嶺の(高値の?)花だったが)。
ただ,私のイギリス人の友人たちに紅茶党はほとんどいない。私と同じで,みんなコーヒーばかり飲んでいる。職場の自称イギリス通(喋る英語は英検3級)が紅茶ばかり飲んでいたのを思い出すが,ありゃいったい何なんだろう。。。(1123字)
「食べるをまなぶ」より
(2007-03-27)
「砂糖あるところに奴隷あり」と言われていたといい、貧困や食糧危機といった現代にも続く問題の根源のひとつが砂糖であったのです。
世界史を勉強していないのですが、分かりやすく書いてあって、すっと読めました。
非常にいい本です
(2007-02-20)
素直に、面白い本だったと思います。
砂糖という一商品の歴史を紐解くと、こんなに新鮮な世界史が顔を覗かせるとは、正直、意外でした。
中学生や高校生の皆さんに是非読んでほしい本です。
そして昔は高校生だった諸氏にも、世界システム論を下敷きにした上で、
モノカルチャーや奴隷貿易などの課題的内容も盛り込み、
良心的趣旨をジュニア向け新書という形で結実させたこの良著を是非読んで欲しい。
「高度な内容を易しく、面白く書かれてある本」ですから、
それ以上言うことはないですね。
個人的には、「お茶の世界史」ではなく「砂糖の世界史」とした辺りがこの本の秘訣だと思います。
ジュニア版に限定するには惜しい名著
(2006-09-17)
紅茶に砂糖を入れるという習慣が、世界の富を集めえたイギリスの富裕階級だからこそ可能だった「破天荒なこと」だということをこの本で知った.その砂糖は、カリブ海の植民地に設けられた広大なプランテーションで、アフリカからだまされて奴隷船にぎゅう詰めにされて運ばれてきた数十万人の若者たちの労苦と犠牲の上に生産されたものであることも.イギリスから独立した米国では紅茶に代わって中南米でとれるコーヒーが広まったこと、それが今のコカコーラにまでつながっていることや、チョコレートが万能薬と考えられ、カトリックの枢機卿が断食の最中でも飲んでよいと許可したことなども興味深い.
題名のとおり世界の歴史に砂糖という嗜好品がこんなにも影響を及ぼしたのかと驚く.ジュニア新書の1冊だが、視点が広く、文章は分かりやすく、大人が読んでもとても面白い.あえて注文をつければ、砂糖キビ由来の砂糖の話が中心で、テンサイ(ビート)からとる砂糖の発展の歴史にほとんどふれていないのが残念.

