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岩波書店
グループ:Book
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発売日:2003-07-25
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他者への自由―公共性の哲学としてのリベラリズム (創文社現代自由学芸叢書)
カスタマーレビュー ![]()
普遍について再考させられる一冊
(2006-04-21)
アメリカのイラク戦争に対する日本世論の「アメリカによって北朝鮮から守られる為なら仕方がない」と言うシニシズムや、「普遍性の名の下に多様性が抹殺される」とか「特定の社会のルールの内部によってしか正論が得られない」と言う風に普遍に対する死刑宣告を下したがる風潮が昨今の論壇の流行となっており、普遍に対する信頼が揺らいでいるのが今の現状です。
しかし、法哲学者である著者は上のようなシニシズムの蔓延や普遍への「死亡宣告」を下すことに異を唱えます。
どうして普遍に対する信頼が揺らいでいるのか?
著者はオリエンタリズム批判やフェミニズム、脱構築などの「普遍批判」が、実は普遍を「覇権」「画一化」「確定性」「基礎付け主義」と混同しているために起こっているものであること。そして、これらの主張や「文脈主義」が実は「自分の考えこそが真である」と言う「権力への意思」が潜んでいることを暴き出します。更に、日本人が昭和天皇の戦争責任を不問にしている事や「アジア主義」の主張の背後にある「馴れ合いの寛容」や「相対主義」と言う名の手前勝手な自己正当化論についても仮借なく暴き出していきます。
それにしても、普遍を再構築するというヨーロッパ世界が不断に行っている地道な作業を日本においても実行していこうとする著者の知的誠実さには感服しました。そして、普遍について真面目に考えようとするひとにとってはお勧めの一冊ではないでしょうか。
批判的知性の復活へ
(2005-11-24)
序において著者はこう述べる。
「現実政治においても知的世界においてもいまや死に追いやられている普遍に、私は生命の息を吹き返させたいと思う。(中略)普遍の名を騙る権力の恣意と欺瞞があまりに横行しているがゆえに、普遍を語る言説を「権力の慰み者」として笑殺したいという欲動が世に充満しているのを感じる。そのような時代だからこそ、「普遍の名を騙ること」と「普遍を語ること」との違いを明確にすることが必要だと思う。」
戦争責任から目を逸らす日本を裁く普遍、覇権と明確に区別される普遍、多元性を尊重する普遍。著者は、「自己の恣意の絶えざる批判的再吟味を迫る理念として普遍を探求する知性のみが、権力の恣意を批判的に克服する地平開くことができる」と主張し、本書を通じて「普遍の再生」の必要を訴える。そして、その通奏低音として「正義」がある。正義に基づく普遍。著者はこれを提示するのだ。
本書の扱うものは多岐にわたる――戦争責任、「アジア的価値論」、グローバル化、多文化主義、フェミニズム、歴史的文脈主義。様々な問題に対し、普遍を語ることが「現実を批判的に変革する人間の構想力を生み出す者であることを信じる者の責任」としてコミットする姿勢に、私は著者の誠実さを感じずにはいられなかった。
本書は、現代社会の重要な問題に、リベラリズムの立場から真摯に向き合ったものである。展開される論は丁寧かつ詳細である。もっと多くの方に読まれるべき名著だと思う。
「らしさ」が出ています。
(2003-08-27)
著者は価値相対主義と法実証主義に代わる理論を作ろうとしています。そこでは、価値を相対化するのではなく、人智を相対化し、相手を手段ではなく目的視して対話を営み、この対話によって多元性を知り、知見を高めていこうとするのです。
その正当化として、等しきは等しくという正義概念から個体的同一性に基づく差異化を公領域で否定します(普遍化可能性)。そこから「相手の立場でもその規範主張をあなたはできるのか」という反転可能性テストを導き、いわゆる数と利益を伴う主張がまかり通る、自己中心的な政治のあり方を批判し、他者の立場に身を置いても妥当する見解かを真摯に考えることを要求します。
この問題意識にしたがって、天皇の求心力やアジア的価値論の持つ対話を困難にする危険性を明らかにしていきます。さらに、ロールズの普遍主義から歴史的文脈主義への転向に、同じように対話を困難にさせる契機を見出し、批判していきます。
著者が「共生の作法」以来、通底して持っている問題意識に貫かれた一冊だと思います。
勘違いしていたらごめんなさい。

