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佐藤 優

岩波書店

グループ:Book

ランキング:7620

価格:¥ 1,995

ポイント:19 pt

発売日:2006-12

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カスタマーレビュー

堀の中の知的な生活  (2008-06-19)
 この本を読む迄の私の佐藤優氏に対する印象は、鈴木宗男氏とともにロシア外交で暗躍した外務省の専門官でラスプーチンと呼ばれた男と胡散臭い感じがし、あまり良いものではなかった。米原万理さんが書評集で本書を絶賛していたことから手にしたが、一気に読んで驚愕・感心し、佐藤氏に対する私の見方は大きく変わった。
 何より驚き感服したのは、500日余の拘留中の読書と学習振りである。制約の多い中でヘーゲルやハーバーマスの哲学書、宇野弘蔵や廣松渉の経済学書、宗教書、歴史書等を、ノートを取りながら読み思索する。加えてドイツ語やラテン語等の語学学習の他、辞典・辞書や高校数学の教科書まで読んでいる。巻末に獄中読書リストがあるが、私が読み通すにはどれも難しそうで、目の眩む思いがした。2つ目には著者の精神の強靭さと信念の一貫性である。検察官とのやり取りや弁護士との打ち合わせに知性の働きが良くわかる。更に獄中での鈴木宗男逮捕に対する抗議のハンストや雑誌「世界」への論文寄稿等の行動力を、同時期に同容疑で逮捕された外務省の同僚や商社員の無定見やひ弱さに比べるとき、彼の地頭の良さは一層きわ立っている。3つ目は佐藤氏の人間的魅力である。拘置所の正月の料理メニューについての記述やスポーツ新聞の社会面や広告欄から外界の動向を推測する箇所には、心の余裕とユーモアが溢れている。また外務省の後輩を気遣う手紙類、隣室の確定死刑囚の様子をその母親に手紙で知らせるエピソードに、人間としての暖かさややさしさを感じた。
 著者は17年間奉職した外務省に恨みはないが戻ることもないという。著者のこれから人生に注目するとともに応援のエールを送りたい。

塀の中が具体的に伝わりました  (2007-12-08)
佐藤何某の信条とか検察に対する考え方などは他で見ればいいのであって、これは正に拘置所の中の実況中継としてみるといい。「へー」という場面がたくさんあって面白かった。意外と恵まれているなというのが感想です。

私にとっては啓蒙書  (2007-10-17)
鈴木宗男なる人物を私が始めてTVで見た時、彼はすでに“真紀子対宗男”などという完全なヒールとしてお茶の間をにぎわせていました。 その人と連座して逮捕された佐藤さんの本なんてどんなものなんだろうー?という軽い気持ちで読んだのですが、こりゃすごいですね。 この本を読んでフローマトカという、今まで聞いたことのなかった思想家の存在も初めて知りました。

私は今まで哲学って、一体何の役に立つのだろう?と考えることがよくあったのですが、この本を読んで、その答えを教えられたような気がします。 本に書いてあることが真実だとするならば、要するに無罪を主張する佐藤氏を国家が断罪しようとする時、では一体何をもって自分は有罪となるのかを徹底的に議論したいと佐藤氏は言っています。 罪とは何か? 誰がそれを決めるのか? 個人に対する罪と国家に対する罪は違うのか? 考えてみればこのような問いに対する答えというのは宗教国家でもない限り存在しないわけで、それは哲学の議論になり、そのためには先人哲学者たちの啓いたテクストに沿わなくては議論すらできません。 こういう究極の立場に置かれたとき、哲学の素養があるかないかで人間は大きな違いが出てくるのではないでしょうか。 現に一緒に逮捕されたほかの外交官達は日に日にやせ細っていくーと、佐藤さんが心配しています。

佐藤氏は主にヨーロッパの思想家について大変な博覧強記ぶりを発揮していますが、文化も歴史も違う日本において、新しい哲学・思想を将来生み落としてくれるのでしょうか。 楽しみです。

ウラ『国家の罠』  (2007-09-17)
『国家の罠』という小説風のドキュメンタリーは、読み終えた後、良質の映画を見終えたときの倦怠感と満足感があった。多くの人もあの本を読み、満足し、佐藤優という個人に興味を持ったと思う。

作品としての『国家と罠』のファンであるならば、『自壊する帝国』を、まず読むべきでしょう。
 
『自壊する帝国』は、『国家の罠』の続編(内容的には「国家の罠」よりも以前の時期をあつかった話)であります。つまり小説風のドキュメンタリーの形式をとっています。内容的にも十分に満足できるものです。

一方この『獄中記』という作品は、多少違った視点から『国家の罠』と同じ時期を描いた「ウラ『国家の罠』」とも言うべき作品です。形式的には、その名の通り、佐藤優氏自身が『獄中にて書いた日記』である。つまり日記文学の形式をとるものです。

したがって『獄中記』はよりパーソナルな佐藤優が前面に出た日記文学です。氏の求道的な態度が『アミエルの日記』や『モンテニューのエセー』『吉田松陰の講孟箚記』などの著者自身の赤裸々な自己形成、苦悶などの心境が描かれている作品を思い起こさせます。

佐藤氏の深い知性に裏打ちされた彼の人生観  (2007-09-03)
背任・偽計業務妨害という容疑によって512日間東京拘置所に拘留された、異能の元外務官僚佐藤優氏のこの獄中記。

佐藤氏の深い知性に裏打ちされた彼の人生観を、彼が書いた書物によってたどる作業は読み手の知性が試される作業でもある。読み手の教養によって、受け取るものはおそらくかなりの差があるのではないだろうか。

例えば国家の罠や自戒する帝国などでは、歴史や政治のバックグラウンドを必要とするし、この獄中記では宗教・哲学・思想といった素地が、理解の程を深く決定付ける。読み手の力量をかようにも明確に映し出す書物は、かなり手強くまた取り組み甲斐もある。

獄中記全体を貫くものは、佐藤氏に降りかかった国策捜査にたいする戦いの意思である。さらに拘留中の512日間を、今までの仕事中心の生活では叶わなかった学問研究に振り当てることで、獄中生活を一切無駄なものにしない彼の前向きな姿勢に脱帽する思いである。

佐藤氏にかかっては、拘留生活の不自由はむしろ愉しみのように思えてくる。実際はとてもそんな楽しいことではないのだろうが、例えば一日に二度のコーヒーが大きな生活のアクセントになっていて、制限のある生活の中でいかにそれを逆手にとって有効活用するかという示唆を読み手に教えてくれる。四年かかって学ぶ量を拘置所という環境なれば一年で完了すると、彼のマインドはどこまで行ってもプラス思考だ。

惜しむらくは、かつて属していた熱い世界に戻る意思を彼自身が失ったことであろうか。鈴木宗男氏が元の世界に戻っていったことと比べれば、佐藤氏の精神は別の行き場所を欲したようだ。それを惜しいと嘆くより、私自身の人生の行き場をこの書籍によって再考することがより前向きな読了者のとるべき道なのではないかと今は思っている。

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